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青年の家が担っている役割はますます重要になっていった。また、平成4年は生涯学習審議会によって『今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について』という重要な答申が出された年でもある。この中で取り上げられた課題は、?@リカレント教育・?Aボランティア活動・?B青少年の学校外活動・?C現代的課題への対応、の4つである。これらはいずれも現在および近未来の青年の家の在り方と密接にかかわっている内容であった。
青少年をめぐる問題がますます混迷の度を深めていく中で、現在、とりわけ体験活動の不足がクローズアップされてきている。青年の家がこれまでに果たしてきた役割、達成した成果をふまえ、生活体験の供給基地としての青年の家の在り方を改めて考えなければならない。また、96.7%にまで達した高校進学率と高学歴化という現状、その中で、かつては“新人類”などとも呼ばれたが、その言葉が懐かしくなるほど変容した昨今の青年層の意識や、社会の変化に対応した青年の家の在り方を見つめなおさなければならない。

 

5.次世代融合期(平成7年〜)
学校週五日制の完全実施の具体的目標年度が西暦2003年と発表され、時間数・教育内容のみにとどまらない学校教育の構造的改革が至近の未来に訪れようとしている。そのような中で、今後の青年の家のめざす方向はどうあるべきか。『国立青年の家・少年自然の家の改善について』(平成7年。国立青年の家・少年自然の家の在り方に関する研究調査協力者会議)は次の3点が基本的な方向であると指摘している。それは、1.「青少年の自主性を育てる」・2.「学社融合を目指して」・3.「地域の中核に」である。
この3つの方向については次章以降で具体的に述べるが、いずれも重要な課題である。
また、第15期中教審の第一次答申ではこれからの社会を、国際化・情報化・科学技術の発展などが一層進展し、変化の激しい時代、先行き不透明の時代であると述べている。その中で、21世紀に向けての教育の最重要課題は、青少年の「生きる力」を育てることであると結論づけている。そのためには、生活体験や自然体験などの実際の体験活動の機会を広げていくことが望まれるが、青年の家は様々な視点から新しい活動のプログラムや事業の開発を行い、積極的に学校に働きかけることによって、日常的に学社融合を実践していくことが今後の需要な使命であると思われる。
学社融合をますます目指していく、そしてそのための切り口をどうするかという視点に立っ一方、人生80年時代・急速に進む高齢化という現実をふまえ、生涯学習社会の中での新たな青年の家のあり方が改めて問い直されている。
■若者の意識と行動
最近の青年層に見られるものの考え方に共通しているのは「自主的・合理的であり、また一面においてきわめて現実的・物質的さらには感覚的・享楽的な意識傾向が指摘される。すなわち、将来よりも目先のことを、心の問題よりもお金の問題を、物事を深く考えず刹那的な快楽をといった傾向である」(注2)と指摘されてからかなりの年数が経つが、このなかの“自主的”という部分を除いては、指摘が時代遅れになったとは考えにくい。のみならず、今日さらに先鋭的になり、加速度的に拡大しているように思える。この指摘がなされた昭和46年は、全共闘の結成と高揚、そして70年安保闘争の挫折に

 

 

 

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